友人中沢賢さんの津金寺の仁王像を描かれた作品です。数々の展示会で賞を頂いております。

 

 

日本水彩画会上田支部展(2011)傷ついた仁王 奨励賞

先生方の意見は、「右腕が全体のバランスを崩している。」それは私も分かっていたこと。あれこれ時代により適当に補修がされているので無理もない。絵としてはどうすればいいかと聞くと、「右腕の部分を目立たないようにごく暗くしたら」「右腕を切り落としたら」など意見を頂いた。県支部の役員から、来年の日本水彩長野県支部展に出品して欲しいと言われ、ちょっと気をよくした。

日本水彩画会長野支部展(2012)傷ついた仁王 読売新聞社賞

2011年の作品のコメントにあるような理由により、この作品では右腕は全くの創作で実際と異なる。現実をそのまま写すのではなく、対象に共鳴した自分の思いを表現するのが私の目的なので、どこもかしこも実際と違ってもかまわないと思っている。ただ、この仁王像から頂いた感慨を形に表現したい。

第6565回周年記念示現会展(2012)傷だらけの仁王

 
日本水彩長野県展(2015) 津金寺仁王 奨励賞
 

示現会展(2016)満身創痍

 

示現会展(2024)年古りし仁王

ウクライナやガザ地区における爆撃による子供の死傷者や戦禍に追われる難民の映像を見ると、殺戮をやめない指導者に強い憤りを覚え、つい仁王の怒りの表情に思いを重ねてしまいます。世界の世論が叫んでも殺戮は止まらない。現人類の本性を見るようで悲しい。興福寺阿修羅像の愁いの顔に思いが至り、そんな思いも仁王の表情にと願いながら画きました。
今回は橋詰守人さんの水彩画の光の捉え方の面白さに惹かれ、埃を払った像に勝手な彩色をして見ました。